書評:『岩波データサイエンス』シリーズ


2017年 01月 10日

去年からAIブームが続いているが、同時に「データサイエンス」さらには「データサイエンティスト」という言葉もよく聞く。

そして、データサイエンスを学習するための本として、以前は統計学などの本が紹介されていたのだが、最近はタイトルに「データサイエンス」が直接入ることが多くなった。

データサイエンスの本というと、やはり以下の、岩波書店の「岩波データサイエンス」を思い出す。

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全6巻の予定で刊行中であり、今までに4巻出ており、4ヶ月に1冊のペースで毎回データサイエンスにちなんだ特集を組んでいる。

各冊、144ページが標準で、税込み1500円と、岩波書店にしては珍しいページ数であり、価格なのだ。

データサイエンスをきっちり順番に勉強していくための学習書というより、データサイエンスとはどんなもので、どんな利用のされ方をしているかを紹介しているような、ちょっと雑誌的な構成になっている。
だから、毎回、異なるメンバーが、様々なトピックを紹介している。

でも、いきなりトピックを始めると難度が高くなり過ぎるので、最初に2,3本くらいの記事は、特集分野についての概説やら入門やらになっていて、この部分はかなり読みやすいことが多い。

執筆者は、最先端の現場で働いているデータサイエンティストが多く、実例の紹介が並んでいる。こまかい説明が無かったりして、この本だけで理解するのは困難なことが多かったり、統計学の基礎ができていないと落ちこぼれたりすることもあるが、さまざまな情報源の紹介などもあるので、目を通すだけでも相当有益ではないかと思う。

岩波データサイエンス刊行委員会があり、統計数理研究所をはじめとして、多くの研究機関、大学、企業の研究者などが協力して多様な分野をカバーしている。
さらに、毎回出版記念トークショーを行い、多数の来場者が参加している。参加者の中には、本物のデータサイエンティストも多く、トークショーに参加することで、データサイエンスの現状、雰囲気を味わうことができる。
トークショーはニコニコ動画で配信され、また過去の動画や、関連情報は「岩波データサイエンス・サポートページ」で見ることができる。

ということで、とても書評といえるような解説ではないが、内容が広範過ぎて、しっかり読んで書評を書くというのは最初からあきらめた。

関係者の末席に傍観者としてトークショーを聞きに行くくらいなのだ。
あ、忘れるところだった。弊社からも、毎回寄稿している。普段は2ページなのだが、第2巻では長いのを寄稿していた。

本シリーズの内容のレベルの高さ、質などを考えると、なぜ増刷を重ねるほど売れてしまったのか、これが一番の謎である。
たぶん、データサイエンティストを目指している人がとても多いのではないか推察している。
実際、データサイエンスがらみのショーに行くと、データサイエンティストという人がいて、いろいろコンサルしますという場面に去年くらいから出くわすことが多くなった。

次号、Vol.5 は、特集「スパースモデリングと多変量データ解析」で、2月中旬に発売のはずだ。