書籍:『パリコレで数学を サーストンと挑んだポアンカレ予想』


2017年 10月 06日

MATH POWER 2017が近づいてきた。
参加される方は注意:場所が、六本木のニコファーレから、青山のスパイラルホールに変更になった。
詳しくは、以下で確認を。

mathpower2017.pngのサムネール画像


さて、「もっと社会に数学を」ということで、今回は巨大合体ナンプレではなく、数学の、それも思いっきり飛んだ数学の本を紹介しよう。

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パリコレで数学を
les mathématiques au défilés de mode

サーストンとポアンカレ予想

著者   阿原一志
ISBN   978-4535788145
判型   A5
ページ数 186
発行   日本評論社
発行日  2017/8/25

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ISSAY MIYAKEのパリコレに数学を取り入れよう。
それも、超難解で有名なポアンカレ予想を元にしたイメージでデザインしようということになり、数学的な説明をするにはこの先生が適切と推薦されたのが著者の阿原氏である。
氏は、最近話題の明治大学総合理工学部(中野キャンパス)先端メディアサイエンス学科・FMSの教授である。
本書は、著者がISSAY MIYAKEのクリエイティブディレクターの藤原大氏への対話の形式である。

副題にもある「ポアンカレ予想」についてはまったく詳しくないので、そのあたりの説明は無視して読んだが、それでも読み進めばなんとなく「絡み目」について分かってくる。

本を開くと、カラーのファッションショーの写真が続き、その後に本書で延々と説明がある「絡み目」、要するに紐などの写真がある。
この写真を見たとき、著者はパリで指導したのかと思ったら、日本で教えただけらしい。

最初に、サーストン教授から渡された「8つの宇宙の形」という絡み目の絵が出てくる。
この8つの絡み図は、幾何化予想に対応しているのだが、詳しいことは説明できないので、自分で調べて欲しい。
絵は紐が絡まっている図なのだが、それが宇宙とどう関係しているか、幾何学と関係しているかの説明が延々と続いて1冊の本になっている。

トポロジーの世界なので、図がどんどん変形していく。
面を曲げて貼り付けたり、伸ばしたりするのであるが、複雑になってくると想像がしだいに困難になり、頭が絡んでしまう。
目で追っていくだけで、結局は同じ絡み目であることが分かることもあるが、困難なものは実際に紐で同じものを作り、ごちゃごちゃ弄り回すと、あるとき突然同じになって、同じこと(同相)は分かったが、変形手順は謎のままで終ることが多かった。

本書には、数式がほとんどない。
それでも、数式レベルのことも知りたい読者のために、各章の最後に宿題がり、計算問題が入っている。

本書は、どういう人が読むのであろうか?
位相数学をちゃん勉強する人は、他書を読むと思う。
それより、数学と社会、デザインの関係などをぼんやりと理解する、イメージするための本であろうか。
数式なんてもう何年、何十年も書いていないような人でも、最先端の数学の一端に触れることができる本と言えば良いだろうか。