書評:『ブロックチェーン技術入門』


2017年 11月 06日

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   ブロックチェーン技術入門
 Introduction to blockchain Technology

著者    岸上順一、藤村滋、渡邊大喜、大橋盛徳、中平篤
出版社  森北出版
定価   2,400円(本体)
頁数   160ページ
判型   A5判
ISBN   978-4-627-87171-7

最近、ブロックチェーンの話題が盛んである。それで、少しはブロックチェーンについて技術的な面を入門レベルでよいから何か読んでおくべきかということで本書を選んだ。
ブロックチェーンの本と言っても、単なるハウツウ本から、技術について解説している本、ブロックチェーンを使ったアプリ開発のための本、もっとブロックチェーンそのものに突っ込んで解説している本など色々だ。
本書は、技術的な仕組みを一応解説しているが、プログラムレベルなど詳細に関しては省略されている。
本書を選んだ理由はそれ以外もあるが、少々大人の理由が入るので、ここでは書かない。

ブロックチェーンの説明は、ネット上にも多数あり、ここにわざわざ書く意味も無かろうと思い、省略する。

本書は概説書なのだが、ところどころ技術的に細かいところも書かれていたりしたので、その一部を紹介しよう。
データを印刷可能文字にエンコードするのに、昔はBase64を使っていたが、誤解されやすい I と 1 と l、O と 0、などを取り除いた Base58が今はよく使われているらしい。

本書の著者は、NTTサービスエボリューション研究所の研究員とOB(大学教授)なので、NTTで取り組んでいるブロックチェーンを著作権管理への応用の解説などもある。

電子マネーは日本ではなかなか普及しないのだが、現在電子マネーが普及しているのがアフリカだと書かれていた。
それで、実際にはどうなのか、ちょっと調べてみた。
アフリカ・ケニアでは、M-PESAという電子マネーが非常に普及しており、GDPの4割を占め、都会への出稼ぎ者が給与をM-PESAで受け取り、そのままM-PESAで送金するのが多いそうだ。
そういう記事も見つかった。

ブロックチェーンは、仮想通貨のためのシステムではなく、もっと多くのことに使える中央集権的ない台帳管理システムであるが、それゆえに現在の中央集権的な利権構造との親和性はよろしくなく、先進国における普及には色々な技術以外の問題点も多くありそうだ。

140ページほどの中に、技術的なことから、将来展望まで書いているので、実際のところや、詳細、アプリ開発などについては他書を読むしかない。
それでも、色々なシステムをできるだけ公平に評価しようとしている点は評価できる。
ブロックチェーンというと、やたらに煽った本とかが多いが、こういう落ち着いた感じで書かれている本の方が、実際には役立つだろう。