TIM Labs

2018年5月アーカイブ

前回、『もうひとつの脳』を紹介した。
脳はニューロンで出来ているという話をよく聞くと思うが、実際の脳のうち、ニューロンの割合は少ない。
重さ、容積で言っても2割に満たない。
より正確に言うと、大脳のニューロンの割合は19%程度らしいが、小脳はニューロンが80%にもなるらしい。
神経細胞はとても大きな細胞なので、細胞数で比較すると、大脳ではニューロンは2%くらいになり、とても数が少ない。

ニューラルネットワークは、人間の脳を構成している神経細胞・ニューロンのネットワークを模して作られている

というようなことがよく言われているのだが、小脳はともかく、大脳には全然当てはまらない。
大脳を手本とするなら、より多くある細胞のシミュレーションをしないと、脳を手本にしたとは言えない。

全脳シミュレーションという言葉がある。脳の全神経細胞数と同レベルのニューラルネットワーク(ニューロン、シナプス)を作って、どんな働きをするかを研究しているらしい。
しかし、全脳というと、脳の働き全てをシミュレーションすることに思えるが、大脳についていえば、ごく一部であるニューロンについてだけのシミュレーションを行っているに過ぎない。
より正確には、全脳規模神経回路シミュレーションと言うらしい。あくまでも、神経回路のシミュレーションである。

脳は、ニューロンよりもその間に詰め込まれていると考えられていたグリアの方が割合が多く、どうやらグリアが色々な働きをしていることが21世紀になって次々とわかり出した。
ならば、グリアの働きも含めた脳のシミュレーションが必要ではないだろうか。

といっても、どうすれば良いかは分からないのだが、今のニューラルネットワークによる人工知能は、いろいろ今までにない性能を発揮し、さまざまなことに役立ちそうであるが、グリアが果たしている機能が抜け落ちているはずなので、今後問題も色々出てくると予想される。

第3世代のAIはニューラルネットを中心にまだまだ進みそうだが、第4世代のAIはグリアも含めた本当の意味の全脳シミュレーションに基づいたAIとなるのであろうか。
21世紀半ばにはそういう時代が来るかもしれないと思う。
TheOtherBrain.jpg

もうひとつの脳
ブルーバックス B-2054

著者  R・ダグラス・フィールズ( R. Douglas Fields, Ph.D.)
監訳  小西史朗   
翻訳  小松佳代子
発行日  2018年4月20日
サイズ  新書, 538頁  
ISBN  978-4-06-502054-8
価格  1,500円(本体) 
発行所 講談社 

The Other Brain
The Scientific and Medical Breakthroughs That Will Heal Our Brains and Revolutionize Our Health
By R. Douglas Fields
発売日: 2011/1/11
ISBN-13: 978-0743291422
出版社: Simon & Schuster; 1版 (2011/1/11)

今回は、数学・コンピュータ系とはちょっと違う脳科学系の本を紹介しようと思う。
といっても、専門書ではなく、BLUE BACKSであり、ポピュラーサイエンスの本である。

今非常に(異常に)騒がれている人工知能は、多くの場合ニューラルネット、ディープラーニングの場合が多い。
人工知能は、もっともっと多様なのだが、フィーバーとは得てしてそんなものである。

その技術の根拠(参考)になっているのが、脳であり、ニューロン(神経細胞)である。
ニューロンは大脳皮質だけだと150億、大脳全体で850億、小脳はさらに多くて1000億くらいあるという。
結局、大脳皮質は、ニューロンの総数の約1割に過ぎないようだ。
なので、大脳皮質だけをシミュレーションしても、一部のシミュレーションしかしていないと思うべきだろうか。

シナプスの総数の説明はなかなか見つからないが、ひとつのニューロンが数千のシナプスを持っているようなので、シナプスの総数は数百兆というとんでもない数になる。

さて、ここまでは、古い話だ。古いというのは、20世紀の脳科学といっても良いだろうか。

この本のタイトルの「もうひとつの脳」の研究が21世紀になって急激に研究が進んで、さまざまなことが分かってきた。
脳は、ニューロンだけで出来ている訳ではない。
血管も張り巡らされているが、それ以外にグリア細胞(Glial cell)がある。
このネーミングは、Glueから来ているらしく、神経細胞を支えている詰物、接着剤、固定剤で、たいした働きはしていないと長らく考えられていた。

しかし、脳の神経細胞の割合は、重さで1割、細胞数だとたった2%程度らしい。
つまり、神経細胞は、脳のごく一部でしかないということだ。
残りの大部分はグリア細胞である。
といっても、その他の細胞をまとめてグリアと呼んでいたのだが、何種類かあり、いろいろ働きが違うことが分かってきた。
ここでは、グリアの詳細の説明は省く。

そして、頭が良いとかは、脳の病気の原因とかは、どうやらグリアに由来することが多いらしい。

アインシュタインの脳が保管され、天才の研究に使われ続けてきたのだが、頭が良い理由とまことしやかに言われていたことと、アインシュタインの脳は一致しないことが多かった。
脳は小さめで、神経細胞にはめだった特徴はなかったようだ。
しかし、グリア細胞は圧倒的に違っていた。

AIについて勉強するなら、同時に脳科学や遺伝についても、ある程度知っておくことが望ましいだろう。
そして、この分野は今世紀になって、急激に発達した。
20世紀までの知識が大幅に修正されたというか、革命が起きたくらい違うのである。
それらは、医学、看護学、薬学など医療分野では当然の知識として今では教えられている。
脳、脳科学について古い考えに基づいて話していると、「あ、この人、若い時に得た知識しかなくて、新しいことを何も知らない」と思われてしまうので注意しよう。
大人になると、神経細胞は死ぬだけというのは典型的なミスであり、老人でも神経細胞が生まれることもあり、これを利用した治療方法などが盛んに研究されている。

本書は、グリア細胞に関してかなり網羅的に、今後の影響なども含めていろいろ説明されている。

脳の主役はニューロンであるとい考え方は古いのだ。
主客転倒し、脳の主役はグリア細胞で、もうひとつの脳こそ主役かも。



risansuugakunosusume.jpg

離散数学のすすめ

編著者  伊藤大雄・宇野裕之

発行  2010年5月15

サイズ  A5, 325頁  

ISBN  978-4-7687-0412-7

価格  2,700円(本体) 

発行所 現代数学社 


プログラミングを本格的にやろうと思う場合、理工系の一般常識である線型代数学、微積分学を勉強し、さらに最近は統計学も習得するのが一般的であろうか。
さらにアルゴリズムなどを勉強すると、離散数学という言葉を知るはずである。
離散数学というと、線型代数学や微積分学などのような非常にかっちりした大きな体系とは違い、さまざまなことがごちゃごちゃと出てくる感じである。

離散数学というと、どうしても野崎昭弘先生を思い出してしまうのだが、ここではあえて避けて、この本を紹介する。

本書は、「理系への数学」(現代数学社)にリレー連載されたものを元に、加筆したもののようである。
執筆メンバーは20名を超え、そのうち何名かはパズル系の研究会で顔を合わせる大学の先生方である。

こういう作りなので、22章あるのだが各章は独立しているため好きな所から読めて、かつ1つの章が10から20ページ前後とちょっと時間があれば読み切れる感じになっている。

離散数学は、見かけは簡単そうに見える問題が、実は未解決問題というのがよくある怖い世界である。

離散数学を知っておくことは、非常に高速なプログラムを作ったり、とても面倒と思われることをエレガントに解決するには絶対に勉強しておくべき分野である。
しかし、離散数学の本は、それほど多くはない。
世の中にプログラミングの本が溢れているが、それに比べて、離散数学の本はあまりにも少ない気がする。
これでは、エレガントなアルゴリズムを考えられる人が十分には育たない。

取り上げている話題を少々挙げておこう。

ケーキ分割問題、ハノイの塔、安定結婚問題、、、

ハノイの塔はよく知られていて、n枚の場合は、 2^n - 1 回が最小移動回数で、再帰でそれが最小であることも含めて証明できる。
ここまでは、多くの本に書かれていることで、いまさら説明の必要はあるまい。

よく知られているのは、棒が3本の場合であるが、k本(k≧3)の場合の最小手数と動かし方の説明があった。
また、棒が3本でも、横に3本が並んでいて、隣の棒にしか円盤を移動できないと制限をつけるとどうなるだろうか?
このような一般化ハノイの塔の説明があるのだ。

これは、他の問題でもそうだが、できるだけ一般化したときどうなるかの説明がある。

そのあたりを書き出すと終わらなくなるので、詳しくは本書を参照のこと。

このアーカイブについて

このページには、2018年5月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2018年4月です。

次のアーカイブは2018年6月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。