書評:『離散数学のすすめ』


2018年 05月 04日

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離散数学のすすめ

編著者  伊藤大雄・宇野裕之

発行  2010年5月15

サイズ  A5, 325頁  

ISBN  978-4-7687-0412-7

価格  2,700円(本体) 

発行所 現代数学社 


プログラミングを本格的にやろうと思う場合、理工系の一般常識である線型代数学、微積分学を勉強し、さらに最近は統計学も習得するのが一般的であろうか。
さらにアルゴリズムなどを勉強すると、離散数学という言葉を知るはずである。
離散数学というと、線型代数学や微積分学などのような非常にかっちりした大きな体系とは違い、さまざまなことがごちゃごちゃと出てくる感じである。

離散数学というと、どうしても野崎昭弘先生を思い出してしまうのだが、ここではあえて避けて、この本を紹介する。

本書は、「理系への数学」(現代数学社)にリレー連載されたものを元に、加筆したもののようである。
執筆メンバーは20名を超え、そのうち何名かはパズル系の研究会で顔を合わせる大学の先生方である。

こういう作りなので、22章あるのだが各章は独立しているため好きな所から読めて、かつ1つの章が10から20ページ前後とちょっと時間があれば読み切れる感じになっている。

離散数学は、見かけは簡単そうに見える問題が、実は未解決問題というのがよくある怖い世界である。

離散数学を知っておくことは、非常に高速なプログラムを作ったり、とても面倒と思われることをエレガントに解決するには絶対に勉強しておくべき分野である。
しかし、離散数学の本は、それほど多くはない。
世の中にプログラミングの本が溢れているが、それに比べて、離散数学の本はあまりにも少ない気がする。
これでは、エレガントなアルゴリズムを考えられる人が十分には育たない。

取り上げている話題を少々挙げておこう。

ケーキ分割問題、ハノイの塔、安定結婚問題、、、

ハノイの塔はよく知られていて、n枚の場合は、 2^n – 1 回が最小移動回数で、再帰でそれが最小であることも含めて証明できる。
ここまでは、多くの本に書かれていることで、いまさら説明の必要はあるまい。

よく知られているのは、棒が3本の場合であるが、k本(k≧3)の場合の最小手数と動かし方の説明があった。
また、棒が3本でも、横に3本が並んでいて、隣の棒にしか円盤を移動できないと制限をつけるとどうなるだろうか?
このような一般化ハノイの塔の説明があるのだ。

これは、他の問題でもそうだが、できるだけ一般化したときどうなるかの説明がある。

そのあたりを書き出すと終わらなくなるので、詳しくは本書を参照のこと。